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GP直送:バトン出走断念までの舞台裏に密着

2015.04.22

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©Masahiro Owari

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「金曜日と土曜日のフリー走行で直面したのと同じ現象だった。走行中に問題が再発する可能性が非常に高かった。どうにかして直そうと最善を尽くしたのだが、悲しいことにスタートまでに方法を見つけられなかった。ジェンソンのレースが台無しになることを知りながら、出走させるわけにはいかない。もちろん、みんな落胆しているが、それがレースだ。次の戦いまで耐えるしかない」

 これはバトンがバーレーンGP決勝へ出走しなかったことに対するエリック・ブーリエの説明である。バトンがレースに出場できなかったのは、2003年モナコGPの予選でクラッシュして、ドクターストップがかかって以来のこと(2005年アメリカGPはミシュラン・タイヤのトラブルにより棄権)。フリー走行や予選でトラブルが発生することは珍しくはないが、そのトラブルを解決できずレースに出られないというのは、よくあることではない。いったい何が起きたのだろうか。

 バトンのトラブルが電気系だったことは、4月20日の記事「ホンダ密着」でも記した。FIAがレーススタート3時間前の15時に発表したリリースでも「ホンダはES(エナジーストア)とCE(電子制御コンポーネント)を交換」と発表されている。

 ただし、FIAの発表は「ホンダがESとCEを交換すると申請したこと」であり、実際この時点で交換作業はまだ続いていた。マクラーレンの関係者は「作業が終わるのは16時半ごろ」だと語っており、レース前にパドッククラブの観客がピットレーンに入る「パドックウォーク」が開催され、ライバルチームがゲストを招いて写真を撮るなど賑わっているなか、マクラーレンのガレージ内だけは「時間と戦っている」メカニックたちによって殺気立った雰囲気だった。


 ようやく16時半すぎにESとCEの交換作業を終了、エンジンに火を入れ、ギヤボックスなど駆動系の暖気作業に入る。ところが、ここでパワーユニットのデータに不安定な箇所が見つかった。原因はわからないが、症状は金曜日の午後と似たような状態だった。そのときはマシンをガレージに戻して調べてみても異常は見当たらず、その後コースインさせたところ問題は再発しなかったが、土曜日のフリー走行で突然、電源を失い、コース上でストップした。このままレースをスタートさせれば、また同じように止まってしまう可能性が高かった。

 では、ESとCEの交換作業を土曜日に行うことはできなかったのだろうか。現在のレギュレーションでは土曜日の予選に出走した時点からパルクフェルメ状態となり、車体のセッティングは変更できない。ただしパワーユニットに関しては適用されないので、パワーユニットの一部であるESとCEの交換作業を行うことは論理的には可能だ。

 ところが、現在のF1には「カーフュー」と呼ばれる作業禁止の時間帯が設けられているため、徹夜での作業ができなくなっている。バーレーンGPの場合は土曜日の22時30分から日曜日の13時までがカーフューとなっていた。これには年間2回までの例外を設けており、バーレーンGPでは例外を行使して徹夜作業することも可能だったが、マクラーレンは開幕戦で、すでに例外措置を1回消化。シーズン序盤で2回目を使用するのは得策ではないと考えた。なぜなら、許可されている2回を超えて作業することになってしまうと、作業したマシンだけでなく、チーム2台そろってピットレーンスタートという重いペナルティが科せられるからだ。


 そのため、マクラーレン・ホンダのスタッフは土曜日の22時30分にエンジニアとメカニック全員がサーキットを退去。日曜日の13時にサーキット入りして、大急ぎでパワーユニットの部分的な交換作業を行うしかなかったのである。

 データが不安定な状態を解消するため、マクラーレン・ホンダのスタッフは、グリッドに着くためにピットレーンが解放される17時30分の直前まで懸命な作業を試みたが(写真:この時点で17時01分)、その努力も虚しく、バトンのパワーユニットが最後まで正常な状態に戻ることはなかった。バトンはレーシングスーツを着てスタンバイしていたが、出走できないことを知らされると黙ってガレージの裏へ消えていった。そして、アロンソのマシンがグリッドへ着くためにガレージをあとにすると、バトンのマシンはガレージの隅へ寄せられ、静かにバーレーンGPを終えた。

 そのときメカニックたちの多くが、レース前の緊迫した状況にもかかわらず、まるで怪我をして動けなくなった我が子を見舞うように優しくマシンを扱っていた姿が忘れられない。

 マクラーレン100戦目となるはずだったレースへ参加することができなかったバトンも、マクラーレン・ホンダのスタッフたちの努力を讃えた。

「ガレージの皆には心から『ありがとう』と言いたい。週末ずっと休みなしに、信じられないくらい必死に頑張ってくれた。彼らの献身な対応に心を打たれた。いつか、その努力にふさわしいご褒美を得られる日が来ることを願っている」

 レース後、カバーがかけられたバトンのマシンは、マクラーレンのファクトリーMTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)へと空輸され、原因の究明が行われる予定だ。

(尾張正博)


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