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新春企画:F1の技術にまつわる、7つの疑問と答え

2016.01.02

 かつてジョーダンやジャガーといったF1チームでテクニカルディレクターを務めたゲイリー・アンダーソンが、F1の技術にまつわる疑問に答える特別企画。ウイングをなくしてタイヤにカバーをつけたら、どうなるのか? スチールブレーキはオーバーテイク問題の解決策となる? 7つの疑問とゲイリーによる答えを紹介しよう。

Q:もしF1が、最近マクラーレンが公開したMP4-Xコンセプトのようなタイヤに変更したら、マシンの他の部分の気流が乱れなくなりますよね。それによって、どれだけのドラッグが減少して、ダウンフォースが改善されるでしょうか?

 F1マシンの乱気流のうち35%相当は、むきだしのタイヤに由来するものだ。カバーを付けてもそれがゼロになるわけではないが、大幅に減少するだろう。ダウンフォースに関して言えば、影響は受けるものの、それほどではない。F1をよく見てみると、全体的なデザインの哲学は、空力的にタイヤとそれ以外の部分の距離をとるようになっている。マクラーレン、レッドブル、フェラーリは、それぞれ異なる角度でこの課題にアプローチしている。オープンホイールにおける気流の処理は、F1マシンを設計する際に投げかけられる最も難しい問題となる。しかし、まったくネガティブな要素というわけではなく、アドバンテージとして利用することもできる。

Q:もしフロントとリヤ両方のウイングが禁止されたら、どうなりますか?

 簡単にいえば、見当もつかない。現在のマシンとは違うものになるだろうが、エンジニアは君と真逆の意見を好むだろう。制約の少ないレギュレーションで自由にすることだ。エイドリアン・ニューエイなどはピットレーンの終点にゴールポストを立て、そこをマシンが通過できればOKみたいな規則を好むだろうと確信を持って言える。学んだ知識を捨ててしまうなんてことはできない。もし市販車のマーケットが1960年代後半に退行して、最高のクルマが1ガロン20マイル(およそ1リットルあたり8.4km)しか走れないオースチン・アレグロになったとしたら、私たちは満足できるかな?


Q:スチールブレーキへの回帰で、オーバーテイクの問題は解決されるでしょうか。スチールブレーキを採用することで、カーボンブレーキの普及に積極的ではない自動車産業との関連が強くなると思うのですが、どうでしょう?

 1999年にアレックス・ザナルディがウイリアムズのドライバーだったとき、彼はカーボンブレーキとブレーキパッドに慣れることができなかったため、スチールディスクを使用していた。それはメリットにはならなかったものの、スチールが使えるという証明にはなった。当時ウイリアムズのパトリック・ヘッドは「スチールブレーキとカーボンメタリック・パッドの組み合わせによるパフォーマンスが悪くなかったことに驚いた」と言っていた。ドライバーがブレーキを酷使する場合において、熱衝撃の面でカーボンディスクは最も安全な選択肢であり、スチールブレーキはこの点が弱い。技術的なソリューションがあることは確かだが、それでレースがより良いものになるかどうかは疑問だ。問題の原因はストレート上でマシンが生み出すダウンフォースがあまりにも大きく、それが制動距離を短くしていることにある。空力によるグリップが80%まで減少し、メカニカルグリップによって置き換えられたとしても、ブレーキングによるグリップは変わらないままとなる。

 オーバーテイクの問題に特効薬はない。空力によるダウンフォースの大幅な減少と、メカニカルグリップの増加は大きな助力になるものの、サーキット側としても取り組んでいく必要がある。コーナーばかりのコースでは、レーシングラインがひとつしかないということになり、オーバーテイクの機会が失われる。なぜ、ほんの少しバンクのついたコーナーにして、アウト側で別のラインを走れるようにしないのだろう? ソチのコースを見ると、路面がとても滑りやすく他のサーキットとは違うことがわかる。なぜ、この舗装をイン側のレーシングライン用にして、アウト側をグリップの高い路面にしなかったのだろう?


Q:F1で風洞を禁止したら、空力は現在ほどの性能ではなくなってしまうのでしょうか?

 これらを禁止するというのは馬鹿げた話で『テクノロジーを禁止する』と言っているのと同じことだ。チームは与えられたレギュレーションの範囲内でより良い物を作るために、こういった設備に多額の投資をしている。F1の唯一の問題点はレギュレーションだ。これが私たちが何度も目にしてきた退屈なレースの原因であり、高騰するコストの原因でもあり、そのために小さなチームの継続が困難になっている。そして。さらなる問題は、これを解決するためのメンバーが、それを作ったメンバーと同じであるということだ。

Q:現在のF1マシンが空力から得ているグリップの70〜80%を、より幅広なマシンや大きなタイヤなどによってメカニカルグリップに変換するためには、どれだけのテストが必要ですか?

 もし空力グリップの70〜80%をメカニカルグリップに変換するというレギュレーションが作られて、チームが追加の実走テストなしに成し遂げたとしたら、レースがずっと良いものになるのは間違いない。現行のレギュレーションがサーキットでのテストを減らし過ぎたため、チームはシミュレーターに多くの投資をした。これらのツールがコストを高騰させ、つまらないレースを生み出した。チームとドライバーは、この非常に洗練された装置によってマシンのセッティングや設計方針を最適化する。資金を投入すればするほど、より詳細なシミュレーションができるようになる。しかし私は、これまでシミュレーションで実際の乱気流を考慮したマップを使用しているという話を聞いたことがない。完璧な気流のマップを使用しているため、マシンは理想のコンディションをもとにセッティングされる。それで、なぜオーバーテイクが難しいのかと言われても当然のことだと言うしかない──。


Q:何年も前のモータースポーツ経験からの意見ですが、北アイルランドのナイトラリーではスタート前に車検が行われ、ミスがあれば「スタート前に解決しなさい」という形をとっていて、それがスポーツらしいやりかただと思います。なぜF1ではレースがスタートしてからミスがあったことを伝えて、ペナルティを課したり失格にしたりするのでしょうか。単に「そのタイヤ圧ではスタートできません」と事前に伝えれば十分ではないでしょうか?

 その時代の話は私も覚えている。先週、私は北アイルランドにいて甥の家に行くためにレンタカーで川沿いの曲がりくねったデコボコ道を運転していた。そして、あのころの素晴らしい夜を思い出していた……。質問に答えると、私も君と同じ意見だ。その状況で、なぜドライバーをスタートさせるのだろう? タイヤの温度や内圧のコントロールは安全上の理由によって決められているので、もしマシンが違反している疑いがあるならば危険な状態にあると言える。チームはそれを知らされるべきだし、ドライバーはグリッドにつく前に強制的に呼び戻されるべきだ。同じコンパウンドで正しい温度と内圧のタイヤに交換して、ピットレーンからスタートさせればいい。

Q:機械工学を学びながら、モータースポーツのエンジニアを目指している学生へ何かアドバイスはありますか?

 できるだけ多くの経験を積むために、チームと関わりを持つべきだ。どんなシリーズでもいい。大切なのは職務経歴書で君の取り組みを見せること。その期間は、どんどん勉強しなさい。そしてチームとの経験が、君が最も興味のある分野での設計に集中するための助けとなるだろう。

(Translation:Akane Kofuji/オートスポーツweb )


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