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<本誌連動企画その1> 日本メーカー参戦の現実味。 2011年のWTCC

2009.12.02

 本誌ハコスカGT-R特集号「SNAP VOICE(P17)」のマルチェロ・ロティのインタビューにも収録されているように、WTCCを運営するKSOでは、S2000規定採用の国内選手権(ナショナルシリーズ)普及を模索しており、その一環として2011年の開催に向けて、JTCC(94年から開催されたクラス2=ニューツーリングとは呼称は同一ながら中身は別もの)の設立を検討しているという。同時に“理想的なイメージ”として日本メーカー2社の参戦についても言及しているのだが、果たしてJTCC、いやWTCC参戦に前向きの日本メーカーとは?

                      (Photo/Hidenobu Tanaka)


Photo/WTCC

Photo/WTCC

 その可能性を探る前に、まずは2011年に予定されているレギューション変更から説明しておきたい。2005年に設立されたWTCCは前身となるETCC時代から、テクニカルレギュレーションとしてFIAのS2000規定を採用してきた。これは言うまでもなく、開発コストの高騰を抑制するためのもので、WTCCでは時代に合わせてターボディーゼルを加えつつも、一貫してこのレギュレーションが採用されてきた。しかし、2011年からテクニカルレギュレーションが大幅に変更されることになり、その最大の変更点はエンジンだ。これまで主力となっていた2000ccの自然吸気およびターボディーゼルを廃し、1600ccのターボに一本化するという。


 このエンジン変更の背景には、WRCのレギュレーション変更が大きく影響を及ぼしている。WRCでは2011年より、S2000をベースに1600ccのターボエンジンを搭載した新型WRカーをトップカテゴリーマシンに据え置くことになっている。WTCCの1600ccターボ化もWRCに歩を合わせたもので、前述のロティは「S2000はひとつのホモロゲーションモデルで、ラリー(WRC)にもレース(WTCC)にも参戦できることが特徴だった。新しいレギュレーションもWRCに合わせることによって、多くのメーカーの参戦を促したい」と語る。

Photo/M-sport

Photo/M-sport

 とはいえ、シトロエンがDS3、フォードがフィエスタをベースに採用したように、新型WRカーではBセグメント車にダウンサイジングされる傾向にある。WTCC用のレースカーにおいては「シャシーはそのままにエンジンだけを1600ccターボに変更する」とロティは語る。そして、このプランに興味を示しているのが、WRCで活躍するフォードだと言われている。

 しかし、フォードのワークスチーム「BPフォード・アブダビ」のマニュファクチャラー代表であり、欧州フォードのシニアマネージャーであるジェラルド・クインは「あくまでもフォードのワークス活動の舞台はWRCであり、フィエスタをベースにS2000と新型WRカーを開発するが、ワークスチームとしてレースに出るプランはない」とWTCC参戦を否定。「BTCCなどレース競技にもカスタマーがいるので、必要があればフォーカスのホモロゲーションを取得したい」とのことで、フォード参戦説は、あくまでもプライベーターチームの動向が左右することになるだろう(09年は実際にBTCCにフォーカスSTで参戦したチームがあった)。


 また、同じWRCを戦うシトロエンはDS3ベースの新型WRカーによるWRC参戦に終始する見込み。同じPSAグループのプジョーは過去に406でWTCCに参戦した経験ももち、IRCを始めとするラリー競技にも207で積極的にカスタマービジネスを展開している。だが、今のところWTCC参戦に対する話は聞こえてこない。IRCにプントを送り込むフィアット、ファビアを投入するシュコダもレース参戦の話はなく、ポロS2000を持つフォルクスワーゲンに至っては「同じグループのSEATがWTCCに参戦しているので新規参入は難しいだろう」とロティも認めている。つまり、現在WRCやIRCを戦うメーカーがWTCCに参戦する可能性は極めて低いのが実状だ。実際いままでも車両の相互転用は可能だったのに、両カテゴリーに同時に参戦したメーカーはなかったのだ。


Photo/BMW Motorsport

Photo/BMW Motorsport

Photo/SEAT

Photo/SEAT

 一方、2009年のWTCCを戦った既存のメーカー、BMW、SEAT、シボレー、ラーダの4社が1600ccターボ化に対応するか否かも、2011年のWTCCで気になるところだが、岡山国際サーキットで話を聞いた限り、4メーカーの回答は「未定」だった。
 ただし、会場では「BMWは1600ccターボ化に合わせて1シリーズにスイッチ」という噂もあれば、「BMWはチーム数を縮小。代わって主力チームのシュニッツァーはFIA-GTおよびル・マンを目指す」やら「TDIターボの禁止でSEATは撤退」など気がかりな噂も囁かれている。そのほか「アルファロメオの復帰説」も浮上していたが、その信憑性はどうだろうか?
 そして、このような噂のなかには日本メーカーの参戦も含まれている。WRCの名門として数々の実績を残すほか、近年ではSUPER GTやスーパー耐久などレースシーンでも活躍してきたスバルだ。冒頭で触れたように、ロティは日本メーカー2社のWTCCおよびJTCC参戦の可能性を言及しているが、そのうちの1社はスバルの可能性が高い。


 スバルのWTCC参戦説は、2008年にも、日本のみならず海外でも報じられていた。08年の日本ラウンドにもマネージメントおよびスバル・ワールドラリーチーム(SWRT)でプリンシパルエンジニアリングを勤めた富士重工業の菅谷重雄が視察として岡山を訪れており、関係者の話によれば、WRCに代わるモータースポーツ活動としてWTCCも候補のひとつになっていたらしい。


 結局、スバルは経済状況の悪化を受けてWRC活動の終了をアナウンスした。そしてWTCC参入を含めて、モータースポーツにおけるワークス活動は凍結されていたようだが、あれから1年、スバルは再びワークス活動の再開を検討しているようだ。事実、今季のWTCC日本ラウンドにも前述の菅谷のほか、SWRTでWRカー開発にかかわったエンジニアも視察に来ていた。ただし、スバル内部ではWTCCの新規参戦と同時にWRCへの復帰も検討されており、関係者によれば「技術者は経験があるので、WRCの再開を望んでいるけれど、マーケティング担当者はWTCCをやりたがっている」とのことで意見が分かれている模様。


 関係者の話を総合すると、今のところWTCC参戦の可能性が高そうだが、スバルのマネージメントはどのように判断するのか?
「参戦するカテゴリーはすでに決まっていると思いますが、WRCを辞めたばかりでアナウンスできるタイミングじゃないんでしょう」とは、前述の関係者。おそらく、WTCCにしてもWRCにしてもワークス活動の再開は2011年以降になることだろう。
 なお、今季もWTCC日本ラウンドにはスバルのほか、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スズキ……と多くの関係者が会場に訪れていた。ロティがイメージするふたつの日本メーカーとは? 日本のワークスチームの参戦が、WTCCの未来をも左右するだけに、その動向に注目したい。
                          (Text/Izumi Hiromoto)

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